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カルロス・カスタネダの遺作『無限の本質―呪術師との訣別』を読む

Tuesday, 31, 2006 at 18:55 |
カルロス・カスタネダの遺作『無限の本質―呪術師との訣別』。
342ページと単行本としてはけっしてボリュームのある本ではない。
が、2,400円もする。
ま、それだけの内容ということだ。

カルロス・カスタネダ遺作『無限の本質―呪術師との訣別』無限の本質―呪術師との訣別』カルロス・カスタネダ著




カルロス・カスタネダとドン・ファン・マトゥス


カルロス・カスタネダという人は南米出身の人類学者なのだが、生年、出生地など正確なことはわかっていない謎の人物。
1951年にアメリカ・ロサンジェルスへ移住。
UCLAで文化人類学を専攻。
在学中、メキシコ先住民ヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファン・マトゥスに弟子入りし、呪術師の修業を積む。
その体験を出版すると全米でベストセラーに。
『無限の本質』はその10作目。

『無限の本質』は師ドン・ファンとの対話とカルロス・カスタネダの自伝的な内容が中心となっている。
他の作品では師との交流が中心で、カスタネダ本人の個人的な歴史については書かれていないか、書かれたとしても限定的だったりした。
なぜ死の間際になって自分の人生を回顧するような内容の本を書いたのか?



戦士のアルバム


師ドン・ファンによれば、「人生の記憶すべきことを収集する――これを戦士のアルバムを作ると表現される――ことは、呪術師たちが「無限の活動的な側(死後の世界のこととされる)」と呼ぶ実在の世界へ入っていく準備をすること」なのだそうだ。

ドン・ファンはカスタネダに、呪術者の言うところの「戦士の道」を歩ませようとする。
その手始めに、雑誌や切手、レコードなどではなく、人生においてその人がどのように生きたかを証拠立てる記憶を収集したらどうかと持ちかける。
そしてたたみかける。
「おまえにとって重要な意味があったさまざまな出来事を網羅するアルバムをこしらえるのだ」と。

カスタネダは自分の人生に起こったことすべてが重要だと主張した。
ドン・ファンはにやにや笑いながら否定する。
「人生における出来事すべてが、おまえにとって重要な意味を持っていたわけではない。しかし、おまえにとって事態を変えてしまったと思われる出来事、おまえの進むべき道を照らしたと考えられる出来事が、いくつかあるはずだ。通常、我々の進むべき道を変えてしまうような出来事は、非個人的なものであるが、それでいてきわめて個人的なものでもあるのだ」と。

そしてその記憶のアルバム作成が「戦争行為」であることを諭す。
「そのようなアルバムを作ることは、自制と公明正大な精神の訓練だということを付け加えておかねばならん。このアルバム作りは一つの戦争行為なんだと考えろ」
カスタネダは師の言葉がチンプンカンプンだった。

ドン・ファンはさらに戦士のアルバムについて説明した。
「わし自身のアルバムはというと、戦争行為であるからして、きわめて慎重な選択をしなければならなかった。いまでは、まさしくわしの人生の忘れられない瞬間と、わしにとって重要であったもの、今後重要になるであろうものが集めてある。わしの考えでは、戦士のアルバムはこの上なく具体的なもの、破壊的な力を持つほどに具体的なのだ」

カスタネダは戦士のアルバム作りに取りかかった。
すると、自分の人生に起こったことすべてが重要だという主張が戯言であったことに気づいた。
さらに、自分の人生に起こったことすべてが意味のないもののように感じられてきた。

カスタネダは数ヶ月かかってあらゆる人生の記憶をたぐり寄せ、とうとう戦士のアルバムに収めるべき記憶の1つを発見した。
それはこうだ。
往年の名女優にそっくりの背の高い美人と教会で結婚することになっていたのだが、その日、グレーのタキシードを着たカスタネダの元にバイク便で婚約者からメッセージが届けられた。
そこには「まだ間に合ううちに愚かな行為を中止しましょう」と書かれてあった。
カスタネダは大勢の招待客の前で突っ立っている羽目になったのだ。
もちろん婚約者がその場に現れることはなかった。

カスタネダはドン・ファンにそのことを話すと、「そんなものは全部たわごとにすぎん」ときっぱり否定された。
戦士のアルバムに収録されるべき記憶とは、「非個人的であるという暗い性質がある」、「そうした特質が出来事にしみこんでいる」、ものだという。
「暗い性質」というキーワードからカスタネダは「病的なもの」を連想してある記憶を呼び起こした。
子供のころ医学部のインターンだった従兄弟に死体安置所へ連れて行かれたときの記憶だ。
そこで死体から何かをはき出すようなゲボッという音を聞き震え上がった。
それは結核で死んだ男性の遺体で、肺が病原菌でむしばまれ大きな空洞ができ、そこにたまった空気が気温の変化によって音を出したり、痙攣させたりするのだという。

その話を聞いたドン・ファンは「いや、まだおまえはわかっておらん」とダメを出した。
そこでドン・ファンは以前カスタネダから聞いたある話をもう一度、細大漏らさずしてみろと持ちかけた。
その話こそ、戦士のアルバムに収められるべき条件とピタリ一致する話だったからだ。

その話は「鏡の前の踊り」という。
その内容は長くなるので、ひとまずここでは秘密にしておくことにする。


詳しくはこちら
無限の本質―呪術師との訣別




何しろ私は『無限の本質』を読みながら、自分でも戦士のアルバムを作る作業に没頭していた。
数ページを読むと、それが呼び水となって思いもよらない記憶がよみがえってきて、それをすっかり再体験するまでは先へは進めなかった。
ということで、読了するのに3日ほどかかった。

去年はアホリエイトを完成させたが、今年後半から来年前半は、この戦士のアルバムを書いてみようかと、そんな気持ちになっている。



        
その他の本 | comments(2) | trackbacks(1) |
コメント
ひさしぶりっす〜。

最近はどうすか〜?

私もようやくブログに本腰をいれることができるようになりましたよ〜ん。

よかったらリンクしてちょ。
更新されたらわかるリンクを貼ったんでこれからはちょくちょくここにもこれるかな?(笑)

また一緒にのみませう。
しお さん | Saturday, 04, 2006 at 11:28
しおさん、お久しぶりです。
最近は秘密のCDを聴いて瞑想にふけってます。
ブログ、賑わってますね〜。

>また一緒にのみませう。

私は時間の融通が利くんですけど、他のメンバーが忙しい人ばかりで、、、(^_^;σ
エイジ さん | Sunday, 05, 2006 at 02:28
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久しぶりにこのブログを更新する。 mixiではちょこちょことメモのような日記を書いているが、オープンなスペースでは日記的な記事を書かなくなった。 ネタはいくつもあるのだが、それを書こうというモチベーションが起こってこない。 では今、何に力を入れてい
金策冒険家エイジのblog | Wednesday, 08, 2007 at 05:31
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痛みが鎮まることを乞うのではなく、痛みに打ち克つ心を乞えますように。

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(ラビンドラナート・タゴール「果物採集」より 石川拓治訳)

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